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小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

晴雨計(第5~8回)

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第5回 2008.5.29(木)
子どもたちからもらった∞パワー


「よーいどん!」
 開会式、応援合戦に続いて、かけっこが始まった。低・中・高学年の順に、走る距離も延びる。1,2年生は50m走だ。自分の番が近づくにつれ、真剣な顔つきになる次女(小2)。足の速い男の子たちと走って、3位は立派だと、学年一遅かった私は思うが、本人は不満顔。人一倍負けず嫌いだからね。
 先週の土曜日、お天気が心配される中、よっぽど晴れ男・晴れ女が集まってるのだろう?!最後まで雨に降られずに、小学校の運動会が行われた。
 玉入れ、綱引き、騎馬戦、リレーなどの定番から、親子や地域の人が触れ合える競技、子どもたちが考えたという、縦割り班対抗の全校種目や、工夫を凝らした応援合戦。全校児童170人余りの小さな学校なので、迫力には欠けるが、今年もアットホームで温かい運動会になった。
 さて、今日のおすすめは、よーいどん!(作・中川ひろたか、絵・村上康成、童心社)という絵本。男性保育士、人気バンドのリーダーを経て、絵本作家になった多才な作者の『ピーマン村』シリーズの1冊。
 かけっことにわとりの鳴き声を掛けた「ダジャレ」や、借り物競走と称し、細かい絵の中から目的の物を探し出す「絵探し」など、遊び心満載。そして何と言っても、昔の私のように足の遅い子でも、これなら勝てるかも?!と思えるような、夢のある競技が魅力的!
 ところで、先々週には、長女(中1)たちの学校でも、体育祭が開催された。昨年開校したばかりで、今回が記念すべき第1回ということもあって、1期生の先輩たちを中心に、ゼロから作り上げてきた。
 『一人の力は小さいけれど 合わせた力は∞(無限大)』のスローガン通り、当日も各軍団結し、大いに盛り上がった。課題やテストが多く、進学校のイメージが強いけれど、決して勉強オンリーではない!キラキラ輝いている長女の瞳が、充実した学校生活を物語っている。
 次女たち白組も、長女たち白軍も、残念ながら優勝できなかったけれど、一生懸命な子どもたちを見ていたら、モリモリ元気がわいてきたよ。ありがとう。

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第6回 2008.6.5(木)
たんじょうびおめでとう


 5月28日、夫の41回目の誕生日。当日お祝いしてあげられればベストだが、仕事、部活、勉強など、平日は家族それぞれが忙しいので、恒例の誕生日会は土曜日にずらした。
 我が家では、先月15日のこの欄で書いたように、母の日同様、家族の誕生日には、手作りパーティーを開くことにしている。
 子どもたちが小さい頃は、親が主体となって進めてきたが、そのうち、何も言わなくても、準備から進行まで自分たちでするようになった。
 子どもたちの考えたプログラムはとてもユニークで、歌や踊り、お笑いや手品などの芸から、家族全員参加のゲームまで、その時々の我が家のブームが取り入れられている。
 イナバウアーが流行った頃は、クラシック音楽に合わせて、フィギアスケート大会のまねごとをしたし、「もういいかい?」「まあだだよ!」と、狭い家の中でドタバタかくれんぼをしたこともあった。
 そもそも、我が家の手作りパーティーの原点になっているのは、私が子どもの頃から大好きなたんじょうび(作・ハンス・フィッシャー、福音館書店)という絵本だ!
 リゼッテおばあちゃんの誕生日に、かわいがってもらっている動物たちが、内緒でパーティーを計画する。ケーキを焼き、花を飾り、リンゴにろうそくを立て…。大判絵本の見開きいっぱいに描かれた華やかなテーブルは、おばあちゃんじゃなくても、感嘆の声をあげてしまう。実は、このケーキ、黒焦げの失敗作なのだが、それもお愛嬌。楽しいお芝居やキャンドルライトの夜景…サプライズなプレゼントはラストまで続く。
 大好きな人を喜ばせたい一心で、一生懸命準備して開くパーティー。お金はかけなくても、たとえ失敗したとしても、気持ちは十分伝わるだろう。
 ところで、誕生日会当日、夫から「部屋が汚すぎる! 苦手なことから逃げるな!!」ときつく叱られた4人(子どもたち+私)! いつになく気まずい雰囲気で始まったが、風船バレー大会が白熱する頃には、いつもの仲良し家族に戻っていた。
 夫の人生(41年間)の約半分を、共に歩いてきたことになる。こんな私だけど、残りの人生もよろしくね。

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第7回 2008.6.12(木)
あなたは、かみさまから何をもらった?!


「いらっしゃいませ。」
 元気のいい女の子たち(かっこいい男子も二人いる!)が、ピカピカの笑顔で迎えてくれるランチのお店「おりづる」。上越市のJR直江津駅近くにある。
 絵本読みボランティア同志の情報交換サークル「おはなしとことこ」で、月1度の活動後、おいしいお昼を食べに寄らせてもらうようになった。
 旬の野菜をふんだんに取り入れたヘルシーで栄養バランス満点の日替わりランチ。手作りケーキとコーヒー付きで、たったの500円というのだから、毎日通いたいくらいだ。
 応対するのは障害のある人たち。一般の人たちと交流する機会が少なく閉じこもりがちだから、料理や接客を通して、自然体で社会参加できるように―。親たちの願いを、オーナーの斉藤田津子さんが聞き入れてお店ができた。
 障害の有無にかかわらず、人間誰しも、得手不得手がある。それが個性として輝くのだということをあらためて教えてくれたのが今日のおすすめの1冊かみさまからのおくりもの(作・ひぐちみちこ、こぐま社)だ。友人への出産祝いには、必ず贈らせてもらうくらい気に入っている。
 ―赤ちゃんが生まれる時、かみさまは一人一人に贈り物をくださる。ほっぺの赤い赤ちゃんには「よく笑う」を、大きい赤ちゃんには「力持ち」を、泣いている赤ちゃんには「歌が好き」を…。他の子と比べて欠点に思えるようなことも、実はその子の大切な個性なんだと気付かされた作者の、育児体験が土台となってできた絵本だ。
 「おりづる」では、料理が好きな子、盛り付けやお運びが得意な子、とにかくおしゃべり上手な子…それぞれの持ち味が生かされ、実に生き生きと、楽しそうに働いている。
 このお店からのお話で、27日まで私の絵本ゆうちゃんとれいちゃん改訂版(日本文学館)の原画展を開かせてもらっている(原画13点のほか、手作り絵本や、この「晴雨計」のコピーも展示)。『ゆうちゃん―』の巻末には、私が考案した「折り紙おばけ」の折り方を載せているが、途中まで「折り鶴」と同じというのも、うれしい偶然だ! 鶴でもおばけでも、食後に折ってもらえるよう、折り紙も置いてある。

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第8回 2008.6.19(木)
この仲間たちと、少しでも長く・・・


 「やったあ!!」
 その瞬間、お揃いの白いTシャツを着た母ちゃん軍団は跳び上がった。うるうるした瞳と、くしゃくしゃの笑顔が入り交じり、互いに抱き合ったまま、ピョンピョン跳ねた。
 先週の水、木曜日、上越市内中学校の各運動部の大会があった。長男たち野球部3年生にとっては、出場できる最後の公式戦である。私もパートを休ませてもらって応援に駆けつけた。
 大会1日目。シードで臨んだ第4試合。6回裏、一挙に4点を入れ、9対2とコールド勝ちを決めた。
 小学2年生から、仲間とともに地元のジュニアチームに入り、そのまま中学校まで8年間野球を続けてきた長男。部活はもちろん、出勤前の父親との朝練、夜寝る前の素振りや筋トレ。暇さえあれば、自分たちの試合を録画したビデオや「熱闘甲子園」のDVDを繰り返し見ている。好きなアニメも「メジャー」、愛読書もバッテリー(あさのあつこ)というくらい、野球野郎なのである。
 そこで、今日のおすすめは、ホームランを打ったことのない君に(作・長谷川集平、理論社)という絵本。
 ―ホームランどころか、ボテボテのセカンドゴロを打って、試合に負けてしまった少年ルイは、近所のコンビニで、強豪高校のレギュラーだった青年仙ちゃんと会う。「ホームランを打つためには、ハードで地道な練習を何年も積み重ねなければならない! でも、最初からあきらめるな。やってみないとわからない」―熱く語る仙ちゃんが、実は事故に遭いリハビリ中だったことを、ルイは後から知る。
 野球少年はもちろん、すべての若者にすすめたい絵本だ。野球だけでなく、娘たちのしているバレーボールにも、そのほかのスポーツにも、いや、人生すべてに大切といえる「夢をあきらめるな!」が描かれている。
 親たちの興奮ぶりを見ると、まるで優勝でもしたかのようだが、実は2日目の準決勝で強豪マンモス校に敗れ、ブロック第3位だった。でも、ラッキーなことに次の地区大会に進める。生徒数も部員数も少ない長男たちの中学では、27年ぶりの快挙だそう!
 背番号「2」をつけて、一人だけ仲間の方を向いて守る長男の後ろ姿を、1日でも長く応援できるといいな。










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